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マンションリノベのプランについて

家族構成の変化という未来を見据えたプランニング

1. 新築マンションは30年以上変わらない田の字型プラン

新築マンションは30年以上変わらない田の字型プラン

まず初めに既存マンションの間取りやプランについて触れておきたいと思います。

既存マンションとは新築時の間取りを指しますが、このマンションという共同住居のスタイルは公団団地タイプの壁構造から始まり、現在のラーメン構造という柱と梁で構成されるタイプへと変わっていきました。
どちらの構造も基本は同じ間取りを左右逆にしたり、もしくは角部屋のみ少し大きい面積だったりとありますが、縦列に並ぶ上下の作りは排水管などの関係で水まわり位置が固定されていくことから間取りが画一的になっています。
これは建築的な都合が大きく影響していると推測します。
新築マンションを計画・設計するときには買い手は決まっていませんので、上記のような建築的理由とさらにもう一つは万人受けするファミリータイプの間取りにしておくことが肝要になっていると言えます。

ですので、外装やエントランスなどの共有部分はどんどん立派になり発展していると言えますが、実際に暮らす室内は30年以上変わらない間取りでの販売が現在も行われているということです

※左側が今の間取り、右側が30年前の間取り

※左側が今の間取り、右側が30年前の間取り

そうなってくると買い手側にとって判断基準となるのは、駅から何分というような立地条件と〇LDKという部屋数と面積、そして金額になってしまう。
しかしこれでは住む皆さんが家に合わせて暮らしていかなければならない
現在は多様な考え方や家族の在り方、暮らし方があるのにもかかわらず30年以上変わらない万人向け間取りにはめ込めなければならない。

そうなれば、収納が足らない、物が溢れる、動線が悪く住みずらい、玄関側の部屋は荷物だらけになっているという不満になっていくのは当然で、決して今お住まいの皆さんが悪いということではないと思います。
ですので収納が足らないからもっと広い家に引っ越すという住み替えを考えるのも当然です。しかし、もう少し広い面積のマンションを買っても残念ながら同じような間取りで収納は足らない状態になり、悩みは解決するとは言い難い…。
またかなり大きな面積のマンション100〜120平米以上のマンションというのであれば収納部屋を作るのも一つですが、都市部ではなかなか出てこない面積であり、更に言えば金額は相当な額になってしまいます。

このような現状の中で注目されているのが、木のマンションリノベーションという取り組みなわけです。

※左側が今の間取り、右側が30年前の間取り

マンションの室内を自由自在に設計し、断熱性能も向上させて、尚且つ収納も自由に作り、家具まで作り込む。
これは所謂、平家の注文住宅と同じで、これこそがそれぞれの家族の暮らしに合わせた家といえるのです

ではここから、それぞれの暮らし方を踏まえたプランについて書いていきたいと思います。

2. 終の棲家か一時的な住まいなのか?

まずは皆さんがマンションリノベを検討するにあたり、その住まいは一時的な住まいとして10年くらい暮らして、都市部から離れた戸建てに住みたいというのなら、今回のリノベは表面的なリフォームや流行を追うようなデザインや今だけを考えたプランでも良いかもしれません。

しかし、その住まいが終の棲家であるなら話は別です。
幼かったお子さんが10年後には個々に部屋を持ち、さらにその10年後には独立して出て行ってしまうかもしれません。
つまり家族構成や暮らし方は結構頻繁に変わるということをプランニングに加味しとくことが必要になっていくのです。
これは決してマンションリノベに限った話ではありません。
戸建てでも同じで、僕らの親世代を見てみると、”子供部屋が必要ということで二階建ての戸建てに住んでいたが、子供の独立後は2階は荷物置きになり、広すぎる家や庭は年齢と共に管理がキツくなっている”ということを多く見受けられます。

※左側が今の間取り、右側が30年前の間取り

しかし、20代30代のクライアント(住まい手)さんに10年後20年後を創造するのはなかなか難しいかもしれませんし、またそのときになって新しい家を買ったり、都度リフォームしたりすることも選択肢の一つかもしれません。

ですが、クライアントさんが40代50代の場合で考えると、次の家族構成の変化があるときは20年後だと仮定すると60代70代となります。
このときに老後を考えるとあまり大きな金額は使いたくないし、何より引っ越し作業を行って帰っての二回するのは体力的にきついのではないかと思うのです。
そうなると、なるべく今のうちに大掛かりなことは済ませておいて、将来的には間取り変更などは簡易にできるようにしておくのが良いのではと弊社は考えています。

3. 家族構成が変わる事を前提にした可変性のあるプランとは

さて、家族構成が変わるパターンはいくつかあるかと思います。

例えば
1・幼い子供が成長してそれぞに子供部屋が必要になるパターン
2・成人した子供が独立して子供部屋が不必要になるパターン
3・両親との同居で部屋が必要になるパターン

等々といずれにしても部屋を増やす必要と減らす必要ということになります。
この家族構成や子供成長に合わせて増減する部屋をどう作るかという事になるのですが、建築で間仕切りを作ってしまうと減らすときに大がかりな工事と費用がかかりますし、また将来に必要という幼い子供世代だとするとしばらく使わない部屋ができてしまう。
ここで弊社が良く使うプランが、大工さんが作った置き家具で間取りを作る可動式プランとなります。

家族構成が変わる事を前提にした可変性のあるプランとは

これは例えば大きな空間を作っておき、家族構成の変化に合わせて部屋が必要ならこの家具で間仕切り各個室をつくり、逆に部屋が不必要なら端に寄せて収納とするというアイデアです。
このように10年後20年後に部屋を増減する事を置き家具で対応することで、将来的なリフォームは基本は必要なく、移動も大工さんに来てもらい簡単に移動できることを考えると、体力があるうちに面倒なことは終わらせて将来は楽できるということわけです。

4. 可動家具の注意点

考え方としては良いプランですが、もちろん問題点がいくつかあります。

エアコンをどう考えるか

エアコンをどう考えるか

たいていは窓際しか設けられないエアコンですので、部屋を可動家具で仕切るとすると片側はエアコンがない状態が出来上がります。
これは大きな問題です。

今まで弊社でこの問題をどう解決したかというと、まずは大前提として家全体を断熱しておくことをおすすめします。
そのうえで、エアコンがない部屋にサーキュレーターで冷やされた空気を届かせる方法があります。これは断熱性能が担保されていれば家全体をエアコン一台で過ごせるレベルになっているので成り立ちます。

また別な方法としてマルチエアコンという方法です。
一台の室外機で複数の内機を取り付けることができるエアコンです。
ただ費用はやはり掛かるのであまりやらない方法です。

そしてもう一つが全室空調という方法です。
これは弊社と師匠である㈱マスタープラン小谷氏でチャレンジしているシステムで、天井裏に設置したエアコンの冷気をダクトを使って各所に送るという形で、冬は暖気を床下に流し全室床暖房になる。
ただ、これは試行錯誤しながらチャレンジしており、現モデルルームでも東京大学の前研究室と東京都市大学の加用研究室の協力のもとで温熱環境や風量、そして消費電力などを計測しながら発展させているところです。

照明をどう考えるか

照明をどう考えるか

これはあらかじめ大きな部屋を二つ以上に分けることはないという前提があれば初めの建築工事の時点で照明とスイッチを二つ作っておけば済むのですが、それが二部屋なのか三部屋に分けるのかが決まってない場合は悩ましい問題です。
この問題に行った解決方法としては、ダクトレールを設置してスポットライト照明にスマート電球を取り付けて、それぞれの電球にリモコンでスイッチをオンオフする方法で解決しています。
ダクトレール型であれば何個でもスポットライトを設置できますし、スマート電球は電球自体のリモコンで調色調光までできるので優れものです。

プライバシーの確保について

プライバシーの確保について

これが一番難しい問題です。
そもそも可動家具は移動することが前提ですので、壁として完全にふさぐわけではありませんので、音や光は抜けやすくなります。
ですので、これがダメという事であれば可動家具での仕切りは考えないほうが良いかと思います。
しかし、マンションはコンクリートの箱なので、外からの音や光はリノベによってかなり軽減できる代わりに室内側は音は伝わりやすくなっているので、そもそもプライバシーを確保するというのは難しい部分があります。
ですので、弊社の基本的なプランの考え方の一つである、リビングは家族で長く過ごせるつくりとして各居室は寝るだけの部屋という考え方が理にかなっているといえます。

今だけ良くて後になって困るような暮らしを何千万もかけて購入するのはできれば避けていきたいと思うのではないでしょうか?