間仕切らない、ふたりの終の住処
埼玉県ふじみ野市で手がけた、夫婦ふたりの終の住処としてのマンションリノベーション。
南西角部屋に加え、北・東にも開口部をもつ住戸は、夏は暑く、冬は寒い過酷な温熱環境が課題となっていた。
全ての壁面・開口部への断熱施工によって外部環境の影響をやわらげ、一年を通して心地よく過ごせる住まいへと整えることができた。
住戸は長辺が長い特徴的な平面形状。
その形状を活かし、壁で細かく仕切らず、空間のつながりを大切にしたプランに。
それぞれの居場所を持ちながらも、自然と存在を感じ合える――
仲の良いご夫婦の関係性に寄り添う「ふたりをつなぐ」住空間となっている。
可動式の収納の位置を変えることで、暮らしに合わせて間取りを変えられる可変性も確保。
将来のライフスタイルの変化にも柔軟に対応できる設計とした。
玄関から玄関ホール、寝室へと連続する空間には、二人の思い出の絵を飾るためのニッチを設け、空間全体をやさしくまとめる要素とした。
ルーバーやハニカムブラインド、造作カウンターを用いることで、玄関や廊下が「通過する場所」にとどまらず、室内空間としての質を高めている。
___ 暮らしの中に記憶を重ねていく、終の住処としての住まいが完成した。
リビング・書斎コーナー
一段下がったピットリビングにはウール100%カーペットを敷き、足ざわりの良い居心地空間とした。
リビングに隣接させた書斎カウンターは、壁を立てずオープンに設計。
夫婦が別々の作業をしていても、互いの気配を緩やかに感じられる。
外の景色を暮らしに取り込み、通風と採光を確保しつつ「会話のキャッチボール」 が自然と生まれる、優しく開放的な居場所をデザインした。
ウッドデッキ
室内と外を繋ぐ中間領域として、バルコニーに簡易的なウッドデッキを設置。
78㎡の専有面積以上に空間の広がりを感じられる計画である。
マンションの長期修繕計画を考慮し、簡単に移動や積み上げが可能なユニット式を採用した。
フローリングの余り材を再利用することで、貴重な木材を無駄なく使い切る工夫を施している。
窓の外へと視線が抜けることで、 日常の中に開放感と奥行きをもたらした。
キッチン
東側に配置したキッチンは、二人が並んで立てるゆとりあるスペースを確保し、回遊動線とした。
天井には「こなみいた」を張り、梁やダクトを隠しながら空間を整えている。
フルフラットな天板と背面のカウンター収納により、視線が抜けるすっきりとした意匠に。
ブルーグリーンのタイルが彩りを添え、家電タワーやパントリーなど、持ち物と使い勝手に合わせた収納計画を実現した。
浴室・脱衣室
既存の位置から大きく移動させ、西側の窓を最大限に生かす配置とした。
浴室からのブラインドの角度を調整することで、外からの視線を遮りつつ空を眺めることができる。
構造上の制約である大きな梁はあえて露出させてモルタル仕上げとし、空間を最大限活かしながらデザインの一部とした。
玄関・玄関ホール・寝室
玄関・玄関ホール・寝室の空間は、西・北2面からの光を最大限に取り込めるようオープンな設計とした。
廊下には夫婦の思い出の額を飾るニッチを設け、室内の一部のようなインテリア性を追求。住まい手の心に寄り添う設計としている。
寝室は三枚の引き戸で仕切ることもでき、日中の開放感と就寝時のプライバシーを両立。
可動式の収納ユニットによって将来の変化にも柔軟に対応する。
エアコン一台で家中が快適となる断熱環境を実現した。
洗面・トイレ
洗面コーナーは廊下に露出し、通路と洗面台に立つための空間を兼ねている。
既存のトイレ部分にあった小窓や配管はすっきりとしたデザインとなるよう造作で隠しながら、同時に通風経路を確保している。
トイレ内の換気扇に木のルーバーを施すなど、細部まで大工の手仕事が光る。