中間領域で光と風を調節する 柔らかなマンション暮らし

中間領域で光と風を調節する 柔らかなマンション暮らし

海風がそよぎ、下町情緒あふれる落ち着いた街、江戸川区・平井。
長年暮らしてきた築35年のマンションは、給排水の劣化や角部屋ならではの厳しい温熱環境に悩まされてきた。
この先の暮らしを見据え、単なるリフォームではなく思い切ってフルリノベーションへと舵を切った。
見学会で体感した確かな断熱施工や、大工の丁寧な手仕事に共感し、
理想の暮らしを共に具体的なデザインへと形づくっていった。

【中間領域のある暮らし】
外と中をつなぐ「中間的な領域」を玄関土間やインナーテラスとして配置することで、光と風を建具で調節するよう計画。
さらに水回りを心地よく暮らせる工夫、女性らしい柔らかさを感じさせるデザイン、きれいなLDKを保つ秘訣・家事室と、
意匠と機能が調和した、マンションリノベーションの住まいが完成した。

築年数35年 面積73㎡

LDK空間

南側の大きな掃き出し窓と東側の出窓から明るい光が射し込むLDK。
南側掃き出し窓の前に外と内をつなぐ「中間的な領域」をインナーテラスとして作ることで、奥行きと豊かさをもたらす。
障子と板戸の開閉により、空間を広く使ったり西日を遮ったりと自在にコントロールできる。
LDKの一角には大きなアール壁を設け、ご実家にもあったアール壁を思い起こすような懐かしさと女性らしい柔らかなデザインに仕上げた。

■リビング
一段下がったピットリビングにウール100%カーペットを敷き込んだ。
造作ソファは南向きに配置し、暮らしの向きを開口に向かって計画した。
背もたれを動かすと簡易的なベッドに早変わりし、ゲストも休むことができる。

■キッチン
友人と囲んで楽しめる、大工造作のカウンター付きアイランド型セパレートキッチン。
冷蔵庫や電子レンジはアール壁の裏や収納に隠し、すっきりと美観を保つ。
冷蔵庫上部には給気口を設け、ダクトから取り込んだ新鮮空気を排熱で温めて室内に送る工夫を施した。

洗面・お風呂・脱衣室

1616(1坪)サイズのハーフユニットで仕上げたお風呂。
脱衣所から浴室、さらにその奥の飾り棚までをガラスで仕切り、天井もつなげることで広がりを感じられる空間にしている。
飾り棚の奥の扉を開けると玄関土間までつながり、空気と光と視線が抜ける中間領域となっている。
浴槽からガラス越しに見える脱衣所と飾り棚にはツガ材を用い、重厚な質感を演出すると共に、浴室の壁はタイルで仕上げメンテナンス性を高めた。
日々の疲れを癒す、贅沢な空間となるようデザインした。

玄関土間

玄関側も外と中をつなげる「中間領域」として、北側窓まで取り込んだ土間タイルの空間とした。
帰宅後に上着の汚れを落としてから室内に入る施主のルーティンに合わせてハンガー掛けや収納をデザイン。
麻の簾戸の向こうには寝室、下足収納上の麻の開き戸の向こうには、
木に囲まれた飾り棚とガラス越しのお風呂が広がる。
透け感のある素材で光と空気と視線が抜け、広さと豊かさを感じる工夫を施した。

鉄扉での玄関ドアからのふく射熱や、ドアポストからの冷気・暖気はインナー断熱ドアで緩和。
夏は網戸で通風も可能。
しめると、玄関ドア部分も木の設えのひとつに見えるようにしている。

寝室

天井照明を設けず、壁付けブラケット1台で全般照明とした。
北側窓からの光は簾戸を通して柔らかく入り、静かでゆったりとした寝室をつくる。

家事室・ウォークインクローゼット

生活感があるものは 家事室とウォークインクローゼットにまとめる

■家事室
マンションの吹き抜けに繋がる扉があり、風がよく抜けるエリア。
洗濯、室内干し、アイロンがけを一連で行える家事室とした。
生活感のあるものは収納に収めることで、リビングをすっきりと保つことができる。

■ウォークインクローゼット
大容量の収納で生活感のあるものを収め、LDKに物が溢れないよう調整できる。

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