95平米 めぐる家
多摩エリアの中心・府中市での子育て世代の住まい。
中古マンション選びの段階からご相談を受け、条件に合う物件を見つけられて今回のリノベーションとなった。
南側にテラスが広がる1階のワイドスパンの物件。
水回りを住戸中央に配置するセンターコアの間取りとしたことで、
子どもたちが自由に駆けめぐることができ、光も空気もめぐる家となった。
冬は全室空調システムで床下に暖気を流し、底冷えを解消。
夏は、リビングの壁掛けエアコンから冷気を出すようにしている。
躯体へのウレタン断熱施工と断熱内窓設置も合わせた取り組みで、
マンションでは珍しい、ZEH基準を超える断熱等級7の住まいを実現できた。
共働きで在宅ワークも多いご夫婦が、
子どもたちとの時間を大切にしながら仕事と子育てを気持ちよく両立できるよう、
集中できる居場所、家族が集える居場所をバランスよく配置した。
リビング・ダイニングキッチン
南側に3部屋の窓が並んでいたワイドスパンの住戸。
テラスが広がり朝から夕方まで気持ちよく入る日射を全て取り込むように、大きなひと続きのLDK空間とした。
回遊できるキッチン、存在感のあるダイニングテーブル、小下がりのリビングと
建具で仕切らず、視線や座る位置の変化で空間に緩やかな役割を持たせた。
一段下がったピットリビングにはウールカーペットを敷き込み、自然と家族が集まる場に。
長年見学会に通っていただく中で大工河西と信頼を積み重ね「ダイニングテーブルは河西さんに手作りして欲しい」とのご希望に応え、1800mm × 900mmのブラックチェリーの巾ハギ材で造作した。
ワークスペース
玄関からリビングへと抜ける動線の途中に、ワークスペースを設けた。
2人並んで使える造作カウンターは、在宅ワークや趣味の場としてはもちろん、将来的には子どもたちの学習スペースとしての活用も見据えている。
リビングとは建具で仕切らず、間にロータイプの本棚収納を配置。視線を抜けさせながら、空間をゆるやかに分け、家族の一体感を生み出している。
玄関まわりの躯体壁に施したツガの羽目板は、ワークスペースの側面にも連続して現れ、
リビング側からも素材の存在感と重厚な質感を感じられるよう仕立てた。
玄関
凸型に張り出した玄関スペースは、断熱ドアで仕切り、風除室のように暑さ寒さを閉じ込める。
足元には、式台や下足箱への通路となるすのこを敷き込み、取り外せば掃除もしやすく、広々とした土間としても活用できる設えに。
玄関ホールに現れる構造躯体のコンクリート壁とパイプシャフトは、
ツガの羽目板で包み込むように袖壁として仕立て、素材の存在感を活かしながら納めた。
洋室
以前は光が届かず、とても暗かった北側エリア。
固定壁で仕切らず、可動収納の配置を工夫することで、空間を柔軟に区切れるようにした。
子どもたちが成長して個室が必要になったときにも、自由に対応できる構成としている。
洋室の入口全面に、開閉自在な建具を設けた。
可動収納の配置にかかわらず出入りしやすく、光の量も調整できるため、
リビングからの光が北側空間にもやわらかく巡る、明るく開かれた環境となっている。
洗面・お風呂・脱衣室(センターコア)
住戸の中心にお風呂・脱衣室・洗面をまとめたセンターコアの間取りとした。
中央に配置することで周囲を回遊でき、どちらからでも出入りが可能となっている。
お風呂の上部にはFIX窓を設け、浴室の明かりがリビングへこぼれるように計画。
センターコアの構成により、冬場の過乾燥対策として、浴室の湿気をサーキュレーターで住戸全体に循環させられるように計画。
脱衣所の裏側は動線上に洗面コーナーを設け、センターコア内の設えで全室空調のダクトも納めている。
ウォークスルークローゼット・トイレ
大容量のクローゼットは、廊下の二方向からアクセスできる回遊動線とした。
家族の洋服はもちろん、カメラ機材など趣味の道具も収まる収納量を確保している。
また、クローゼットの一角に小さなデスクを造作。
椅子を使わずPC作業ができるカウンターは、「秘密基地みたいな場所が好きだった」との話から、遊び心をもったおこもり感のあるスペースに仕立てた。
その後の暮らし
とても研究熱心なご主人。
梅雨時期から夏場にかけて快適な温熱環境をどう保つかレポートにまとめて送ってきてくださり、その都度アドバイスをさせていただきながら、快適な住空間づくりを楽しんでいただいている。
緑豊かなテラスがあることから、外部環境は絶対湿度19~21g/m³で推移している中で、室内では絶対湿度12〜14g/m³に抑え、温度は25~26℃の快適な環境を作ることができている。
住居の高い性能を理解した上で暮らし方を研究してくださっているので、これから迎える冬場もセンターコアを利用して高い湿度を保ちながら快適な住空間を作りあげていってくれることと思います。