マンションの最適空調を考える
1. 居室ごとの空調が一般的な日本のマンション
日本のマンションでは各部屋ごとにエアコンを設置する空調を利用することが多く、ハイグレードなマンションではそれに加えリビングやダイニングの一部にだけ床暖房を設置するということが多いようです。
マンションは気密性が高く、開放型の暖房器具(ファンヒーターやストーブ)などの利用ができないため、寒い場合は基本的に電気式のストーブなどを補助的に使うことなります。また、間取り的に通風が期待できない場合は、夏に冷房と扇風機を併用する家庭が多いと思います。
2. マンションでの室外機の置き場問題
戸建て住宅と違い、マンションの場合は屋外は共用部分扱いとなります。室外機を設置するとなるとバルコニーまたは開放廊下に置くことが一般的です。バルコニーはともかく廊下側に面したところに室外機を設置するスペースがないと、廊下側の部屋にエアコンを設置するのは難しくなります。
室外機の設置にあたっては下記のような条件があげられます。
・屋外であること
・室外機を水平に置けること
・室外機の周りに十分なスペースが取れること
・室外機の吹き出し口から出る熱風、冷風が周囲の迷惑にならないこと
・排水が流れても問題がないこと
・雨や直射日光があたりにくく、風通しがよいこと
また、外壁も共用部分となるため勝手に穴をあけたりという工事ができません。こうした条件をクリアして室外機を設置できるのか、マンションリノベの場合は確認しておく必要があります。
3. 床暖房のデメリット
現在の日本の住まいは、ほとんどが強制熱源機(クーラーやファンヒーター)を使うため、夏は冷房で冷やしすぎたり、冬は暖房しすぎで乾燥して病原菌ウィルスを増殖したりしてしまう…そんな不健康な空気環境をつくり上げてしまっています。
さらに強制熱源機は、空気の性質上足元が冷たく頭上が熱くなりがちで、人間にとって最もよくない熱環境になっています。
一番適しているのは、輻射熱や遠赤外線の間接的熱源機がよいと言われています。
床暖房がそれにあたるのですが、最大のデメリットは初期投資が高額で維持費も高く、さらにメンテナンス性が極めて低いため壊れると厄介という点です。また表面温度が意外と高いため、長時間接触していると逆に不快に感じてしまうという点もデメリットといえるでしょう。
4. 全館空調へのトライアル
マスタープラン一級建築士事務所が設計し、Toivoが施工した「浦和の家」では、マスタープラン一級建築士事務所の提案により、床下と天井裏空間をチャンバーとした全館空調の仕組みを取り入れました。
1台のエアコンで全ての部屋の床暖房と冷房をするトライアルです。
戸建ての住宅ではすでに床下空間や小屋裏、一階と二階の間をチャンバーとした全館空調を行っている工務店も多く、マンションでも同様にエアコン1台で全館を空調できるのでは?という試みでした。
スケルトンインフィル工法を利用したこの方法なら、初期費用が電気式の床暖房と比べ1/3程度で済み、メンテナンス性も高い全室床暖房が可能になります。
この取り組みが評価され、この「浦和の家」は、公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター主催の『第36回住まいのリフォームコンクール』におきまして、国土交通大臣賞を受賞いたしました。
5. 真冬でも20度の室温をキープ
全館空調にすれば、各居室の温度差を極力抑えることができ、四季を通じて快適に過ごすことが可能となります。断熱工事との相乗効果で、真冬でも20度以上の室温をキープすることができ、温風が直接肌に当たることもなく、ストレスのない空間を実現することができました。
またToivoのマンションリノベでは、通風を考えたプランニングを行うため、バルコニーから廊下側にとても気持ちのよい風を流すことができます。プランニングの工夫次第で高層階ではこの通風はかなり期待できると思われます。